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スイス時計界の頂点たらしめる驚異のグランドコンプリケーション

1844年にジャン・アドリアン・フィリップがパリ産業博覧会で発表した鍵なし竜頭巻上げ・時刻合わせ機構をはじめ、パテック フィリップがその長い歴史のなかで実に数多くの革新機構を生み出してきたのは、前回も触れた通り。ただ伝統に則ったタイムピースを手がけるだけでなく、時代に応じた最新技術を駆使して時計界をリードする存在でもあったのです。

とくに永久カレンダーやミニッツリピーターといった複雑機構におけるパテック フィリップの技術は抜きん出ており、早くから数多くの特許を取得。こうした成果は、やがて世界の富豪の目に留まることとなり、パテック フィリップにビスポークモデルを発注する人が現れます。

20世紀前半に作られたビスポークモデルで、世界的にも知られたタイムピースが1933年に発表された、超複雑懐中時計《グレーブス・ウォッチ》。ニューヨークの銀行家で芸術愛好家だったヘンリー・グレーブス・ジュニアのために作られたそれには24の複雑機能が組み込まれており、「史上最も複雑な時計」というオーダーを見事に具現化したのです。ちなみに、このグレーブス・ウォッチは、2014年にサザビーズのオークションに出品され、2323万7000スイスフラン(日本円で約25億円)という時計の全カテゴリーでの世界最高額で落札されました。このように“時代を超越した価値”という点でも、パテック フィリップは時計界の頂点にあるわけです。

さらに時は流れて、創業150周年を迎えた1989年には自社が持つ世界で最も複雑な時計の記録を塗り替える「キャリバー89」を完成させます。この懐中時計に組み込まれた複雑機能は33。それから25年後の2014年には、創業175周年記念モデルとしてグランドマスター・チャイム5175を発表。こちらも20もの複雑機能を備えた世界で最も複雑な腕時計のひとつに数えられています。